世界を救うまであと4分 第五話「キノコ」

第一話 第二話 第三話 第四話 「イモね」 誰に言うでもなく、キノコは呟いた。 午後になってから、照り返しもより一層厳しさを増し、彼女は生え際あたりに預けていたサングラスをかける。そして、西棟に吸い込まれていくアリの様に小さくなった生徒たちを見…

世界を救うまであと4分 第四話「羽熱砂」

第一話 第二話 第三話 毎朝、熱いシャワーを浴びた後、自ら冷水を頭から被り、「あーーー!」と必要以上に大きい声をあげるのが彼女の日課だった。それは、その朝も同じだった。 昇り始めた太陽がカーテンの隙間から覗き、彼女の赤みがかった栗色の長い髪を…

世界を救うまであと4分 第三話「メッセンジャー」

第一話 第二話 漆黒の闇の中に浮かぶのは、彼のその真っ白な顎髭だった。 「時間がありませぬ」 闇から全身を現した彼は、月の光に照らされると同時にそう口走った。いや、実際には口走ってなどいない。口は動いていないのだ。しかし、彼ははっきりと自分の…

世界を救うまであと4分 第二話「芽理沙」

第一話 「みんな今日は来てくれて本当にありがとう。それでは最後の曲です」 「えーーー」という予定調和のレスポンス。レスポンスというよりは、それは極めて動物的な反応で、最後の一曲を歌い終えるまでメリサは胸のムカツキを隠すのに必死だった。 飛堕理…

世界を救うまであと4分 第一話「月光」

一瞬、闇が忍び寄ってきたようでゾッとした。マトモな生き物など、もう当の昔に死に絶えたはずなのに、とオレは考えながら、その暗闇の塊を凝視すると、それは黒いレトリバー犬だということがわかった。その黒い犬は、オレに気付いたかのように、プイと踵を…